「無理解への怒りがトリガーに。仕組みがないなら、作っちゃおう」働くママの新しい選択肢を「静岡モデル」で全国へ#1
「デザインの仕事をしたかったけど…やっぱりほかの仕事を探します」
子育てしながら好きな仕事に挑戦したものの、あきらめていくママたち——。
こうした現実を目の当たりにして、「そんなママを一人でも多く減らしたい」と一念発起したのが、株式会社hub代表の鈴木晴子(通称ハル)さん。
ハルさんは、「託児付きで学び直しできる場所」や「子どもの成長に応じた働き方サポート」など、「ママが働きやすい仕組みづくり」の事業化に挑戦しています。
自身も子育て真っ最中のハルさん。マーケティング会社の経営者として活躍する一方で、社会課題の解決に取り組むトリガーとなったのは、なんと「怒り」だったそう。
ハルさんを突き動かしたのは、何だったのでしょうか。ザキヤマが聞きました。
| 話を聞いた人 | 株式会社hub・鈴木晴子(通称ハル)さん |
|---|---|
| ハルさんが今、挑戦していること | 「ママが働きやすい仕組みづくり」の事業化を静岡で実現 |
| この記事のポイント | ・「社会にその仕組みがないなら、作ろう!」 ・支援業から新規事業立ち上げへの挑戦 |
| 事業内容 | ・法人向け支援:マーケティングや新規事業、リブランディング、業務効率化・デジタル導入支援 ・個人向け支援:柔軟な働き方設計やマッチング、地域イベント、行政との連携 |
| ハルさんのマーケティングサロン入会時期 | 2023年1月 |
| URL | 株式会社hub(静岡県静岡市) |
※2025年9月時点の情報です。

目次
「女性には難しいんじゃない?」家族を犠牲にしない働き方が起業だった
ザキヤマ:
今日は、株式会社hub代表の鈴木晴子さん(以下、ハルさん)にお話を伺います!ハルさんは、昨年の「マーケティングプレゼン対決」でも紅一点の女性マーケターとして、登壇してくれました。
まずは株式会社hubについて教えてください。どんな会社なんでしょうか?

ハルさん:
株式会社hubは、法人向けに集客やマーケティング、新規事業立ち上げ支援、リブランディングといった支援業をやっている会社です。2023年2月に設立して、3期目になります。
今年から個人向けの新たなサービスとして、女性たちの働き方サポートやマッチング支援も始めています。秋からはスキルアップスクールもリリース予定で、子育てママの「働く、学ぶ。」を多方面でサポートしていきます。
ザキヤマ:
起業されたきっかけって何だったんですか?
ハルさん:
出産後に職場復帰した後のハードな日常がきっかけでした。
新卒で働いた企業からリクルートに転職して、デザイン制作から新規事業の立ち上げまで、あらゆる業務に関わりまして。その後、ベンチャー企業を2社経験しました。
会社員時代の最後では、拠点の立ち上げ責任者をやっていたんですけど、当時は子どもがまだ1歳くらいだったんですね。
なので、子どもを保育園に預けた年と、責任者を任された年が同じだったんです。
ザキヤマ:
出産後に復職したのと同じタイミングで、統括責任者としてのお仕事が重なってしまったんですね。これはかなり大変そうです…。

ハルさん:
めちゃめちゃハードでした。やっぱり責任ある仕事をバリバリとやりながら、子どもを育てることの難易度はかなり高くて…。
すぐ熱を出したり、目を離すと危険な子どもの育児と、プロジェクトを束ねる責任者。このイレギュラーさを両立するというのは、すごく難しかったです。
子どもがしょっちゅう風邪をひいて保育園から呼び出されるから、お迎え担当の旦那さんは有給をあっという間に使い果たして、会社の人にも「大丈夫?」と心配され始めるほどでした。
私も会社で責任者を任せられるか不安視されて、社長から「やっぱりおじさん入れようか?」「女性には難しいんじゃない?」と言われてしまう始末。
家族みんなが疲れきって、倒れる寸前でした…。
ザキヤマ:
カオスですね…。僕も3児の親として、容易に想像できます。
ハルさん:
さすがに「このままでは無理がある。家族が犠牲にならない働き方をしよう!」と考えた結果、独立するに至ったというわけです。

なぜマーケティング支援会社のhubが、働く女性支援を?
ザキヤマ:
現在はマーケティング支援会社の代表として、中小企業の集客やDX支援などをされているわけですよね。
専門家として静岡商工会議所でInstagramの講座を担当したり、クリエイター向けにブランディングセミナーで登壇したりと。講師業でも活躍されています。
そんな中で、新たに取り組んでいるのは、どんな事業なんですか?
ハルさん:
子育てママのリスキリングやマッチング支援の事業です。
託児付きで学び直しができる場所と、子どもの成長にあわせた働き方を支援するサービスを構築しているところです。
先日も、静岡市から支援を受けるためのビジネスコンテストに応募するため、夜な夜な資料を作っていました。

ザキヤマ:
サービスは、もう動き出しているんですか?今は、どんな段階なんでしょう。
ハルさん:
カオス期ですね…。
新規事業については、まだタネの段階で、採用や資金調達をどうしようかと話し合いながら進めています。
ザキヤマ:
なぜマーケティング支援会社が、託児付きリスキリングやママの働き方支援をしようと思ったのでしょうか?
ハルさん:
さきほど起業した理由についてお話しましたが、わたし自身そういう背景があったので、自社の取り組みとして、スタッフさんの働き方を仕組みで整えることを、これまでずっと実践・検証してきたんです。
ザキヤマ:
hubが業務委託をお願いしている、ママさんたちのことですね?
ハルさん:
そうです。今では「ワークシェアリング」って言って、例えばひとつのお仕事をチーム全体で請け負う構造にすることで、誰か一人が倒れても、他の誰かがタスクを巻き取れる形ができあがっています。
これが、すごくいい仕組みなんです。
hubでは、全く経験のない人が入社してきても、チームで教育してあげたり、仕組みに乗って、ステップアップしていける構造があるんです。
だから、お子さんの成長とともに卒業して行く人もめっちゃ多くて!
もちろん残ってくれてる人もいれば、ポジティブに卒業していく人もいます。hubにいる間にスキルアップしているので、自信をもって次のステップを選んでくれているんじゃないかなと思っています。
ザキヤマ:
業務をしながら、学び直しできる環境があるんですね。
ハルさん:
そうなんです。
あと、小さなステップに分けることも大事です。例えば、子どもが1〜2歳までの頃は、なるべくタスクベースのお仕事に切り出しをしてやってもらうとか、同期しない仕事をお願いするとか。

ハルさん:
子どもが3〜5歳になってきたら、幼稚園に預けている間に時短勤務ができたり、小学校に上がったら、さらに広げて、フロントのお仕事もできるようになったりっていう階段をつくっているんです。
ザキヤマ:
なるほど!階段ですか。
ハルさん:
働き方のステップがないのが課題だなって、ずっと思ってたんです。家族の成長フェーズに応じて変えていける設計があれば、働ける人がもっと増えるんじゃないかと。
ザキヤマ:
子どもの成長に合わせて働き方を変えていければ、仕事しやすいですよね。
成功体験を積む前にあきらめる女性たちへ、小さな「できる」のステップを
ハルさん:
階段が無い事例ってあるあるじゃないですか。例えばいきなり30万のパーソナルジムとかスクールとかに入りましょうみたいな(笑)。
「これ、一生誰も行けないじゃん!」って。
ザキヤマ:
見たことありますねー!
ハルさん:
階段を作ることで到達しやすくなることって、すごくあると思っていて。子育てのために仕事の現場から離れているママたちは、ただでさえ働くことのハードルが高くなっています。
でも、小さな「できる」を積み上げて、自信をつけて次のステップに行ける環境を作ってあげれば、どんどん力を発揮してくれるんですよ。
ザキヤマ:
それは僕もめちゃくちゃ感じます!成功体験が足りてないだけなんですよね。
初めは「私なんかが、デザインできるの?」という人でも、小さな成功体験を積み重ねていくと、気づいたら「できてるじゃん、私!」ってなる。
ハルさん:
そうなんです。特に子育て中の女性は、自分のことより家族のことを優先して、あきらめてしまうパターンが非常に多いんですね。
自社でも、ポジティブに卒業していく人もいれば、ネガティブに「無理です。デザインの仕事をしたかったけど、生活が成り立たないから、他の仕事をさがします。」って、去っていく人を沢山見てきたので…。
だから、なるべくやりたい仕事で実現してほしい気持ちがあります。
社会の無理解への怒りが、トリガーに
ザキヤマ:
とはいえ、新規事業の立ち上げって、大変じゃないですか。
既存事業を伸ばしていく路線もあったと思うんですが、あえてこの事業に取り組もうと思ったきっかけがあったら教えてください。
ハルさん:
自分が独立したときも、いわゆる「バリキャリルート」と呼ばれる、会社員でのキャリアアップをあきらめています。これって、うち特有の問題かなと思ってたんです。
わたしは両親とも他界してるし、旦那さんもお母さんを亡くしていて、子育てを頼る先がないという「超核家族」なので。
でも、チームで他のママさんと働くようになったら「あれ?みんな同じ課題を持ってる」って気づいたんですね。両立は困難だし、学びたくとも機会が得られない人がすごく多いなって。
ザキヤマ:
自社チームのママさんたちも、同じ悩みを抱えていたわけですか。
ハルさん:
はい。そんな時に、X(旧Twitter)で大炎上していた政治家の発言が目に入ったんです。
「妊娠中や育休中の女性に、リスキリング支援を強化する!」というものです。
※編集部注:
2023年に国会の参院代表質問で、自民党の大家敏志参院議員が「育休・産休の期間に、リスキリング(学び直し)によって一定のスキルを身につけたり、学位を取ったりする方々を支援できれば、逆にキャリアアップが可能になることも考えられる」と“提案”し、「育休は『休暇中』ではない」と大きな反発を引き起こしました。
(引用:「育児中のリスキリング」なぜ炎上?ドイツの「親時間」から考える、読売新聞)
ザキヤマ:
ありましたね……。

ハルさん:
それを知って「子育てとかしたことがない、何も知らない政治家が、リスキリングとか言ってんなぁ~!」と怒りがわいてきたんです。
「学び直しをしようにも、今ここに目を離せない子どもがいるのに、どうやって?」って。
「子育てに対する想像力がなさすぎるなぁ」って、すごいムカついたんですね。
そこで、仕組みになってないなら、作っちゃおうと。もともと自分の価値観として「無ければ作ろう」が強くあるので、じゃあ本腰入れて事業として取り組もうとなりました。
ザキヤマ:
社会の無理解への怒りが、トリガーとなったんですね!
中小企業の課題をママの柔軟な働き方が解決する
ハルさん:
一方で、中小企業のご支援をしていくと、マーケティングやクリエイティブ制作以前に、業務効率化の問題を解決する必要が出てくることがあります。
この課題を先にクリアにしないと、そもそもマーケティングも機能しないという。
ザキヤマ:
あるあるですね!
ハルさん:
なので最近は、DXとかデジタル支援領域にも踏み込んでいるんですが、デジタル分野でスキルをつけた女性たちが、在宅ワークやフレックスといった、制限の少ない仕事でマッチングできる機会が、ここにあるんです。
お子さんの成長ステージに応じた仕事を増やしつつ、企業側の課題をクリアにしていくことで、人材の受け皿を増やす。この2つを同時にやっています。
ザキヤマ:
なるほど!地域企業に対する支援にもなる。
DXや組織改善と、女性のライフステージに合わせた支援サポートを繋げることによって、クリエイティブ人材や、デジタル人材がいない企業の課題解決ができるんですね。
ハルさん:
そうなんです!
ザキヤマ:
中小企業の課題を、女性が柔軟に働くことで支えるモデル。これは上手くいってほしいです!
(➡️後編に続く:「仕事と家庭が対立しない社会をつくる」働くママの新しい選択肢を「静岡モデル」で全国へ#2)

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