「花屋さんて、キャリアが描けない職業なんです」思いも評価する制度で、花屋の関係人口を増やす!
「スタッフをどう幸せにするかが、いま一番の関心ごとです。」
お花のサブスクサービスや、親子イベントが大盛況の花屋「花のあるくらし研究所(花研)」の所長、中村将史さん。地域に愛される花研ですが、なんといま、大きな課題と向き合っているそうで…。
お花屋さんの幸せなキャリアアップに、ザキヤマが迫ります!
| 話を聞いた人 | 花のあるくらし研究所・中村 将史さん |
|---|---|
| 中村さんが今、挑戦していること | 花屋らしい評価制度の構築して、スタッフを幸せにする |
| この記事のポイント | ・花屋は将来のキャリアが描きにくい仕事 ・お花を飾ることで家族をご機嫌にしていきたい |
| 事業内容 | ・生花の店頭販売、結婚式などの装花制作、企業の祝い花制作 ・花のあるくらし研究生(お花のサブスクサービス) ・イベント企画&主催 |
| 中村さんのマーケティングサロン入会時期 | 2020年10月 |
| URL | 花のあるくらし研究所(静岡県静岡市) 花のあるくらし研究所Instagram |
※2025年11月時点の情報です。

目次
独立から5年。一番の関心ごとは、スタッフをどう幸せにするか?
ザキヤマ:
今回は、花のあるくらし研究所、通称「花研」の中村さんをお呼びしました!
中村さんには、今年の3月に静岡理工科大学で開催した『M20 放課後クロスカフェ』セミナーで登壇してもらったんですが、その時の「花屋さんの業界をより良くしたい」というお話が、すごく刺さったんです!
M20放課後クロスカフェ「花屋の独立開業のリアル」 vol.5 イベントレポート
ザキヤマ:
もっと多くの人に知ってもらいたくて、指名させてもらいました。
まずは中村さん、自己紹介をお願いできますか?


中村さん:
ありがとうございます。
「花研」の中村将史(まさし)です。静岡大学を中退後、地元の老舗花店でフラワーアレンジや、ブライダル装花などの経験を積み、2020年10月に独立しました。
お花の定期便から事業をスタートし、今は静岡市葵区上足洗に花屋「花のあるくらし研究所」を構えています。
月額制でミニブーケが受け取れるサブスク「花のあるくらし研究生」が好評で、累計1600名と、今では事業基盤になりました。
子どもむけの「花研キッズ」も、地域の子どもたちが多数参加してくれていますし、昨年11月には、花瓶の月額レンタルサービス「生けかえる」も始めました!
お花の店頭販売から、結婚式の装飾や企業向けの祝い花まで幅広く、「お花を日常に飾る人を増やしたい」という思いを軸に、活動しています。
ザキヤマ:
ミニブーケのサブスクサービスは、静岡マーケティングサロンの名物企画『マーケティングせよ』から生まれたアイデアですよね!よく覚えています。
あと花研さんは、イベントの主催もしていますよね!

中村さん:
そうですね。親子が参加できるイベントの企画・運営も、地域のみなさんに喜んでいただいています。「上足洗どんぐり夏祭り」は今年も1,500名ほどのお客さんが来てくれました!
新春餅つき大会やハロウィン、ミモザ撮影会、クリスマスリースづくりと、季節を楽しむイベントを開催しています。
「花のあるくらし研究生」は来店型のサブスクなので、店舗を中心としたコミュニティにもなっているようです。


ザキヤマ:
改めてお聞きしますが、なぜ大学を中退して花屋さんになろうと思ったんですか?
中村さん:
学生時代に居酒屋でアルバイトをしていたんですが、手に職をつけたいと思い始めて。そんなとき、目に入ったのが通学途中にあった花屋さん。「花屋でバイトしてたらモテるかな」くらいの軽い気持ちで、働き始めたのが、きっかけでした。
ザキヤマ:
実に学生らしい動機で、いいです!(笑)
それで、のめり込んでいったんですか?
中村さん:
子どもの頃から生き物や土いじりとか、自然と触れ合うのが好きで、大学では生物学を専攻していました。でも、授業は実験ばかり。「なにか違うな」と感じていた頃に、別の花屋「スナゲリーフラワーズ(SNUGGERY Flowers)」の杉山社長と出会ったことが大きなきっかけになりました。
社長とスナゲリーフラワーズの魅力に触れて、花屋になろうという思いが強くなり、退学してスナゲリーフラワーズに就職しました。
ザキヤマ:
独立しようと思ったのは、なぜなんでしょうか?
中村さん:
チャレンジしてみたかったからです!
スナゲリーフラワーズには15年近く勤めて、店舗ディスプレイや結婚式の会場装花、展示会まで、お花のあらゆるジャンルに携わらせてもらいました。仕事に不満はなかったんですが、異業種交流会でさまざまな人と出会い話すなかで、挑戦したくなって。
「35歳で独立しよう!」と決意しました。
ザキヤマ:
独立して5年ですね。
セミナーでも聞かせてもらった、現在の取り組みについて、改めて教えてください。
中村さん:
スタッフのために、評価制度を整えようと取り組んでいます。
いま、僕の一番の関心ごとは、「スタッフをどう幸せにするか」なんです!
制度づくりを考え始めたきっかけは「見えないビジョン」
ザキヤマ:
どんな経緯で、スタッフのために制度を整えようと思ったんですか?
中村さん:
まず、会社の売上をもう一段上げていく必要があると考えました。これまで僕は、一人で全部決めて指示して…というスタイルが多かったんですが、もう頭打ち感があったんです。
そこで、業務をスタッフに引き継いでいこうと思ったのですが、今のままでは自律的に動けない状況になってしまう。どうすればスタッフが自ら考えて動けるようになってくれるかを考えたときに、「花屋はキャリアデザインを描きにくい職業だな」って気づいたんです。
ザキヤマ:
めっちゃわかります!
中村さん:
「将来、この会社でどんな立場になれるのか。何をクリアしたら次へ進めるのか?」それが見えづらいんですね。職人気質なところもありますし。
なので、将来のなりたい姿を描けるようになれば、「給料を上げたいから、これにチャレンジして結果を出そう!」と、自分で目標を決めて挑戦できる組織になるんじゃないかと思いました。

つまり、事業拡大を目指す過程で「キャリアの見取り図」を整える必要があると痛感したのが、制度設計に踏み出したきっかけです。
ザキヤマ:
なるほど。社長の立場から権限移譲を進める中で、スタッフ目線の「キャリアの道しるべ」が必要だと気づいたわけですね。筋が通ってます!
ただ、評価や昇格の道筋ってすごく大事ですけど、どう設計するんですか?
中村さん:
「店長になるには何が必要か」の基準が曖昧だと、スタッフは自分の位置も成長の方向もわかりません。
だから、金額や売上だけでなく、花屋としてのあり方まで含めた評価基準をつくろうと考えました。
たとえば、人に教えるのが好きな人、ものづくりの時間が幸せな人…「仕事の幸福感」にもいくつかタイプがありますよね。
そのタイプごとにルートを何本か示してあげて、メニュー化するイメージです。自分の「やりたい」に近づく道を選べるようにします。
ザキヤマ:
いいですねぇ! ロールモデルも見えやすくなるし、「道しるべ」があると前に進みやすい。
中村さん:
はい。実際に評価基準を一度つくってはみたんですが……。
ザキヤマ:
お、ここで課題が出てきた?
中村さん:
そうなんです。誰もやらない・・・正確には、考えて取り組む時間がつくれない!
日々の業務に追われて、振り返りや自己評価の時間が取れないんです。社員は終業時間も決まっているので、なおさらですよね。
そこで気づいたのは、「ルールだけ作ってもダメなんだ」ということ。まずは「承認し合う文化」をつくる必要があったんです。
ザキヤマ:
なるほど〜、土壌づくりからですね。
中村さん:
承認されることで、自分の存在価値を感じ、次を目指そうという気持ちが芽生える。
だから、白黒つける評価の前に、「花研らしさ」としての行動・考え方・振る舞いが浸透する土壌づくりを進めています。
まずは「あなたがここに居てくれることが大事」というメッセージを、伝え続けることからです。
ザキヤマ:
うん、すごく大事!
評価はその上に乗るもの、ですね。
「女性に限らず、誰もが働きやすい花屋」を目指して
ザキヤマ:
「女性が働きやすい会社」の認定や表彰も視野にいれていますか?
中村さん:
はい。静岡市のワーク・ライフ・バランス推進事業所の認定や、静岡県の男女共同参画の表彰、国の「えるぼし」「くるみん」など、目指しやすく分かりやすい指標を意識しています。
「よくしたいです!」だけでは目標として弱いので、第三者の認定を目安にするのは有効だと思っています。
ザキヤマ:
たしかに、市の認定を受けました、みたいな分かりやすさは強いです。
中村さん:
実際、うちの店は子どもの発熱などにも柔軟に対応していて、みんなでフォローしあっています。
「子どもを連れてきてもOK」という理解もあります。こうした実態を形として整え、対外的にも打ち出したいです。
女性店長や女性役員など、管理職の活躍も広げていきたいですね。

ザキヤマ:
いいですねぇ。お母さんだからこそのスキルが活きる場は、まさに花屋らしい働き方だと思います。
中村さん:
「こういう仕事を任せています」「こういうことで活躍しています」と示せるようにできるといいですね。
ただ、僕は女性、女性と強調するのはあまり好きではなくて。性別に限らず働きやすいという方向で考えたいです。
ザキヤマ:
女性に限らず、誰もが働きやすい花屋さんですね!
中村さん:
とはいえ、まだまだその前段階。時間はかかるかもしれません。まずは、評価制度の設計以前に「文化づくり」「文化の醸成」、つまり下地を作るところから進めています。
ザキヤマ:
土台づくり、大事ですよね!

花屋の関係人口を増やし、数字だけで測れない価値を評価する
ザキヤマ:
文化づくりや評価基準の設計で、参考にしている人や会社はあるんですか?
中村さん:
「アチーブメント(心理学『選択理論®』を基礎理論とした教育研修プログラムのこと)」の研修で、経営者としての学びを得ました。考え方のベースに取り入れています。
それから、スターバックス。どこの店舗でもスタッフがいきいきと働き、お客さまとよく会話していますよね。調べてみると、承認の文化をすごく大切にしていると知り、取り入れたいと思いました。
ザキヤマ:
わかります! あと、静岡マーケティングサロンの仲間で言えば、株式会社LEAPHの河原崎さんは「リーフらしさ」と判断基準をかなり丁寧に作り込んでいて、日報や週次の振り返り、読書会、社内会議、合宿まで運用していますよ。
業種は違うけど、ヒントは多いんじゃないでしょうか!
文化の醸成=判断基準の明確化、なんですよね。
中村さん:
なるほど!すごく参考になります。
ザキヤマ:
また、組織づくりが上手な仲間には、マーケティングサロン法人会員のエストリンクスさん(株式会社エストリンクス、代表 安藤悟)もいます。
音楽バンドをきっかけにライブハウスで出会った創業メンバーが中心となって理念を作り、いまでは社員さんを数十名抱え、静岡市中心街にオフィスを構える会社組織になっています。
私から見てもこの2社は、社員さんと話すと代表の思いが浸透していて、良いチームだなぁと感じます。
中村さん:
思いの浸透は大事ですね。花研の理念をもっと深く共有できれば、花屋で働きたい人も増えてくれるかもしれません!
ザキヤマ:
ぜひ、河原崎さん、安藤さんに聞いてみてください!
中村さん:
そうします!
実は花屋って、小2〜小3くらいまでは「なりたい職業」のトップ3に入るんですよ。でも、実際になる人は少ない。潜在的な母数は大きいのに、入ってみないと全体像がわからないブラックボックス感があるんです。

中村さん:
だから、業務の公開や関わり方のメニュー化で「ここなら自分も参加できる」を増やしたくて。
がっつり正社員でなくても、関わり続けられる「関係人口を増やす」イメージですね。
ザキヤマ:
いいですね! 関係人口を増やすことで、間口が広がる。
中村さん:
花屋はハードな側面や、リスクもあります。だからこそ、重くコミットする人には相応の稼ぎが見込める状態を見せつつ、そこまでじゃない人にも入れる道筋を用意します。
特に子育て中の女性が多いので、そこを拾い上げる仕組みを作りたいんです。売上だけで測るのではなく、「花屋らしい働き方」を評価する視点を入れていきたいなと!
ザキヤマ:
うん、納得!数字だけじゃ測れない価値を評価軸に入れることには、大賛成ですね。
(後編に続く)

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