
創業105年の老舗傘屋「藤田屋」四代目の挑戦#1【アトツギ甲子園出場の裏側】
「自分では届かなそうな場所に、あえてトライする。」
そう語るのは、アトツギ甲子園に出場した、静岡市の大正8年創業の老舗傘屋、藤田屋四代目の藤田大悟さん。
2024年9月に家業を継ぐ決意を固め、静岡に帰郷した藤田さんは、これまでどんな道のり、どんな想いがあったのでしょうか?
今回、ザキヤマは、第5回「アトツギ甲子園 関東ブロック予選」を終えた翌日の藤田さんに今の心境を伺いました。
※「アトツギ甲子園」とは…中小企業庁が主催する、39歳以下の事業承継予定者たちによる新規事業アイデアを競うピッチイベント。
(記事編集/しあわせ販促工房 窪田てるみ)
企業名 | 株式会社藤田屋(静岡県静岡市) |
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業種 | 傘とレイングッズの会社。企画・卸・直営店運営・リペアまで一気通貫で対応 |
URL | 藤田屋公式サイト 藤田屋公式オンラインショップ「PartyRain」 |
マーケティングサロン 入会時期 | 2024年9月 |
藤田さんの ナイストライポイント | ・事業承継の決断 ・アトツギ甲子園への挑戦 ・静岡マーケティングサロンの積極的活用 |
※2025年5月時点の情報です。

目次
半年間を駆け抜けて今、ようやくスタートラインに

ザキヤマ:
帰郷から半年ほどで「アトツギ甲子園」という大きなトライに挑みました。プレゼンを終えた今、どんな心境ですか?
藤田さん:
ようやくスタートを切れるかな、というのが率直な心境です。
静岡に帰ってすぐ親の会社に入り半年が経ちましたが、ずっと焦りながら駆け抜けてきてたので、今やっと一つの区切りがついたという感じがしています。
ザキヤマ:
昨日、「アトツギ甲子園」の予選が東京で行われて、私も現地へ応援にかけつけました。残念ながら決勝進出はならずでしたが、ナイストライでしたよ!(拍手)
藤田さん:
ありがとうございます!正直なところ…めっちゃくやしいです!(笑)
ザキヤマ:
本番に向けて準備を積み重ね、プレゼン資料のブラッシュアップをとても頑張っていましたよね。静岡マーケティングサロン(以下、マーケサロン)のメンバーたちとの壁打ちも、かなりの回数をやっていたと聞いています。

藤田さん:
静岡に帰ってきたときは、人的な繋がりがほぼない状態でした。業界のことも全くわからないし、前職と業種も違うし職種も全く関係ないところから入ったので、まず自分の会社のことを学ぶと同時に、外部の方との繋がりを強制的に作るようにしていったんです。
それが、ひとつ目のトライでした。
というのも僕、元々どちらかというと内向的な人間なんです。
会社員時代の同僚に「いろんなコミュニティに顔を出してる」って話をすると、「ガラじゃないね!」と、びっくりされるくらいで。
自分から外の繋がりを作れるタイプじゃなかったんですが、家業を継ぐにあたっての覚悟と決意は固めてきていたので。
その熱量でいろんなコミュニティに飛び込んで、人間的な繋がりを作れるように頑張ってきました。

なるほど、コミュニティへの積極的な参加から始めたんですね。ナイストライ!

藤田さん:
あとは、とにかく家業の傘屋をもっとキャッチアップできるようにと、基本的な組織の仕組みを見直したり、システム関係を整えることに力を入れました。
これが、はじめの3ヶ月間で取り組んだことです。
当時は、具体的に事業をどうしていくかも固まっていなかったので、とにかく働きやすい職場作りとか、何でもいいから横に繋げていこうという感じでしたね。
それが「アトツギ甲子園」にトライしたことによって、まとまってきた感じがしています。
アトツギ甲子園がもたらした変化

ザキヤマ:
「アトツギ甲子園」で具体的にどうまとまってきたんですか?
藤田さん:
「アトツギ甲子園」は、過去の経営資源の継承がテーマのひとつになっています。
そこで、自社の歴史をさかのぼる作業に取り組みました。古参の従業員にインタビューしたり、両親と事業について話し合ったりと、会社について徹底的に向き合うことができたんです。
その後、桜井さん(株式会社HONE代表・マーケターの桜井貴斗さん)との壁打ちで、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)が繋がってきたんですね。
MVVは、実際に会社の年頭ミーティングでも発表しました。
自分から働きかけて、気合い(笑)を入れるためにビネスト(静岡市運営の会議室)の会議室を借りて開催しました。事業計画の宣言とMVVを発表することで、社内の目線合わせをしたかったんです。
会社としても、初めての試みでした。
ザキヤマ:
それは大きな進展ですね!ナイストライです!
藤田さん:
「アトツギ甲子園」は、事業の解像度を急速に高めることができた強制的な場であり、かつ、一番良かったのが、出場することによってすごい応援される力を感じられたことです。
僕も何だかわからないくらいに「応援される力(りょく)」が上がったんですよね!
ザキヤマ:
めっちゃ応援されてる感じがしてましたよね!

藤田さん:
いろんな人に応援していただきました。ザキヤマさんにも、現地でめちゃくちゃ応援いただきました。
マーケサロンのメンバーでは、松尾さん(magnet-design代表・プロダクトデザイナーの松尾憲宏さん)やよっしーさん(ありかた代表・マーケター/Webエンジニアの片井義之さん)には長い時間の壁打ちにおつきあいいただきましたし。
桜井さんにも2週間ぐらいみっちり相談にのってもらいました。
ほかにも、信じられないぐらい沢山のDMやX(旧Twitter)の返信をいただいて、応援してもらえる繋がりを得られたのが、出て一番よかったことですね。
それと今、MIRUIプロジェクトというクラファンにも挑戦しています。

MIRUIプロジェクトVOL.48 | 静岡傘屋アトツギが先人の想いを未来に繋ぐ

MIRUIプロジェクトのクラファンは4/24にスタートしました!ぜひみんなで藤田さんの新たなトライを応援しましょう!ナイストライ!
このプロジェクトの目的は、将来的にMakuakeなどでプロダクトを出していく前に、クラファンの練習をしたかったことと、パルコと松坂屋で展示したいな、くらいの気持ちで。
ところが、たまたまMIRUIプロジェクトの担当の方が、僕のXをフォローしてくれて。「アトツギ甲子園」に出ることも応援してくれて、プロジェクトがやりやすくなりました。
さらにMIRUIプロジェクト繋がりで、清水駅前商店街の芸術祭にアンブレラ・スカイで参加することになったり。
ザキヤマ:
いろいろな活動が繋がってきてるんですね。
藤田さん:
そうですね。「アトツギ甲子園」へのトライによって、自社の深掘りや、元々考えていたミッション・ビジョンを固めることができました。
新事業でも、横の繋がりと連携しながら取り組めていますし、それをまたいろんな方に応援してもらえたりと、広がりと繋がりをすごく感じています。
昨日で「アトツギ甲子園」は一区切りしたんですけど、これまで社外で頑張って働く環境を整えてきたので、今後は自分がやろうとしている新事業を推進する土壌固めをしていきたいと思っています。
成長のために「背伸び」して得られたこと
藤田さん:
藤田屋へ入社してすぐに既存の業務をスタートしていたら、ここまでの広がりは得られなかっただろうと思います。その時の自分では届かなそうな場所に、あえてトライするという意味で、背伸びは意識してやっているつもりです。
マーケサロンでの活動にしても、そうです。
僕は未だにマーケティングについてよく知らないですし、みなさん既に結果を出してる人たちばかりなので(編集部注:あくまで藤田さんの見解です)、その中に飛び込んでコミュニケーションを取るだけでも、全然結果を出せてない僕としては、かなり頑張っている感覚なんです。

ザキヤマ:
それもトライの一つですよね。
藤田さん:
アトツギ甲子園はさらに上をいく大きなトライでしたが、強引に不釣り合いな背伸びを重ねることによって、成長曲線の一番高い所を狙うことができたんじゃないのかなという実感はあります。
そしてここから先は、自社と向き合う時間にしていきたいです。
ザキヤマ:
広げたところを収束させていく時期ですね。
藤田さん:
そうですね。しっかりと自分たちのものにしたいので。
傘作りも、1から勉強しようかなと思っています。
もちろんアトツギ甲子園で宣言したことはちゃんと実行していくとか、現実にベクトルを向けて取り組んでいきます。
トライの繋がりが応援される力を生み出してくれた
ザキヤマ:
トライが次のトライに繋がっていくのが、素晴らしいですよね。
マーケサロンに入り、メンバーの小松さん(カネス製茶四代目アトツギ・小松元気さん)の後押しで、アトツギ甲子園へ。
ピッチの壁打ちで、桜井さんとミッション・ビジョンをやることになって。さらにMIRUIプロジェクトへ・・・と。
トライって「やるか、やらないか」で捉えられがちなんですが、そうではなくて、トライしたら次のトライがやって来て、と連鎖していくんですよ。
藤田さん:
本当にそうなんです!あとトライの数は、できれば2〜3個はした方がいいですね。
心理的にもいいですし、同時進行でのトライが繋がる瞬間が生まれるからです。
そして出場して気づいたのは、「トライしてる人」って意外と少ないのかもってこと。トライしていると、なんかやたらと応援してもらえるのは、あまりいないからなのかもしれないです。(笑)
ザキヤマ:
面白いですね!
藤田さん:
めちゃめちゃ応援されますよ!直接繋がっていない人からも「頑張ってますね」みたいに声をかけられました。
ザキヤマ:
トライしてる人って、同じようにトライしてる人同士の横の繋がりもできますよね。
藤田さん:
それはすごくあります!
(中編に続く)
ザキヤマが、あなたの悩みの入口になります。
静岡マーケティングサロンは実践者のナイストライを後押しして、実践者同士が生の事例や悩みを共有し「これってみんな、どうしてる?」を聞ける居場所です。